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グーグル連邦、栄華は3年?――混迷の時代に(NewsEdge)2008/02/08, 日経産業新聞, 28ページ, 有, 2447文字
IBM30年、MS10年… 新陳代謝加速
AOLも今や“お荷物”
「第4世代秩序」を模索
ハイテク産業が新たな秩序を探す混迷の時代に入った。米タイムワーナー(TW)は二〇〇一年に合併したAOLの分離に動き出した。一時代を築いたマイクロソフト(MS)はグーグル台頭でヤフーの買収を提案、そのグーグルも一―二年前のような勢いを失いつつある。既存や新興、業種を問わずプレーヤーたちは「第四世代秩序」の頂点を目指してうごめく。
IT(情報技術)バブルの象徴ともいえる「世紀の合併」の失敗はハイテク産業の加速度的な新陳代謝の激しさにある。「道理にかなうあらゆる戦略的動きを取る」。六日、AOLのネット接続(プロバイダー事業)分離の方針を表明したTWのジェフリー・ビューケス最高経営責任者(CEO)の発言は意味深だ。
現在のTWはネット革命の旗手ともてはやされたAOL(当時アメリカ・オンライン)がTWを〇一年に事実上買収して誕生した。小が大をのみ込む買収だったうえ、創業十年あまりの新興企業が歴代大統領とも特別な関係にあったエスタブリッシュメント企業を買収するとあって、新時代の到来を印象づけた。
それから七年。AOLはいまやTWの“不良資産”である。ネット接続は通信会社やCATVが提供する高速大容量通信(ブロードバンド)が主流となり、AOLが有料会員に付与してきた電子メールアドレスは容易に無料で手に入る。
AOLの昨年十―十二月期の営業利益は前年同期比七〇%減。有料会員はピークだった〇二年九月の二千六百七十万人から、九百三十万人に減った。AOLはネット接続を分離し、成長が望めるネット広告や玄関(ポータル)サイト運営に専念すると説明するが、ネット広告収入の伸びも一〇%まで落ち込んでいる。
時価総額が急減
AOLの不振でTWの時価総額は買収発表時からおよそ二千億ドル(約二十一兆円)も減った。冒頭の発言は、赤字のネット接続を除外して身ぎれいになったAOLを売却するための準備との観測を呼ぶ。
だが苦しんでいるのはAOLだけではない。
買収交渉を始めたマイクロソフトとヤフー。九五年発売の「ウィンドウズ95」でハイテク産業の頂点に立ったMSはネット事業に出遅れ、株価は二〇〇〇年以降、三十ドル前後のボックス圏を出られない。ヤフーの株価もピークの五分の一だ。
興味深いのは三社が九〇年代半ばから二〇〇〇年代前半の十年間に最盛期を迎えた同世代企業ということ。代表選手の名を借りれば「マイクロソフト世代」と位置付けられる。汎用コンピューターでハイテク産業に三十年間君臨したIBM体制を打ち壊した「ハイテク第二世代」ともいえる。
その第二世代を窮地に陥れたのがグーグルだ。〇四年に上場すると、一年あまりで時価総額は千億円を突破。いまや時価総額はシスコシステムズやインテルを抜き、MSに次いで、ハイテク二位の座を手に入れた。
3分の1の法則
さらに衛星地図のキーホール、動画共有のユーチューブ、ネット広告のダブルクリックを次々と買収。規模(スケール)と勢い(モメンタム)の乗数で考えると、グーグル連邦はMS帝国をしのぐ「ハイテク王者」といっても過言ではない。
不思議なことに米産業史を振り返ると、世代交代のサイクルは三分の一ずつ短くなっていることに気づく。ロックフェラーの石油やカーネギーの鉄鋼は九十年間の栄華を謳歌(おうか)した。次がIBMの三十年、そしてMSの十年と続く。
この“法則”に基づけば、グーグルの黄金時代は三年となる。
実際、倍々ペースで拡大した同社の売上高や純利益は昨年十―十二月期にそれぞれ五一%増、一七%増となり、成長に陰りが見え始めた。エリック・シュミットCEOがヤフーのジェリー・ヤンCEOにMSによる買収の阻止で協力を申し出たのは、上場三年で築いた秩序を維持するためだとも読み解ける。
今まさに、世代交代期につきものの流動化現象が始まったのは間違いない。
(ニューヨーク
=八田亮一)
米ネット再編 「辺境」の事象
「これからケータイこそがインターネット、アジアを制する者が世界を制する時代が来る」
孫正義ソフトバンク社長は七日の決算記者会見でこう強調した。中国最大のネット企業アリババグループとの連携を軸に「アジアとケータイネットのトップ企業」を目指す孫氏の目に米国での動きはネット産業の辺境で起きている現象とさえ映っているかもしれない。
ソフトバンクは米ヤフー、アリババと三角形の連合を構築し「アジアシフト」を加速している。ソフトバンクはアリババの議決権の約三三%に相当する株を保有、米ヤフーは約四〇%を持つ。ソフトバンクは米ヤフーの三・九%を握り、ソフトバンク子会社の日本のヤフーの三三・四%は米ヤフーが持っている。
孫社長と米ヤフーのジェリー・ヤンCEOはかねてアリババの取締役。〇七年六月に馬雲(ジャック・マー)アリババCEOをソフトバンク本体の取締役に迎えた。人的にも資本的にも非常に結びつきが強い連合体といえる。米ヤフーのテコ入れ策についても、マイクロソフト(MS)が過去数年ヤフーに秋波を送ってきたのを尻目に孫氏、馬氏、ヤン氏の三人で何度も話し合ってきた。
ソフトバンクの携帯ネット戦略の中核にいるのがソフトバンク携帯の検索を担う日本のヤフー。だがグーグルがKDDI(au)に続きNTTドコモとも提携し、日本の携帯市場の約八割がグーグルの検索を標準使用することになった。放置しておけばヤフーで国内ネット市場の覇権を握るシナリオが危うくなる。
MSが連合に加わることが、日本の携帯市場でのグーグルの攻勢に反撃するのに有利かどうか。仮に買収が成立すると間接的に株を持たれることになるアリババ側はどう反応するか。今回のMSの動きについて孫氏はあくまで「アジア・日本」の文脈で判断しヤン氏や他の米ヤフー取締役に意見していくに違いない。(編集委員 小柳建彦)
【図・写真】ソフトバンク孫社長
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